美味しさは未来を作る。
お茶と食を大切にする理由
- 大森正司氏
- お茶博士
「食」は人生を豊かにする
大森:
先ほど園内を見せていただきましたが、本当に素晴らしい環境ですね。園児さんには、丁寧にお茶まで出していただきました。
迫田:
ありがとうございます。茶々保育園(入間)は茶畑に囲まれていることもあって、お茶は私たちの園ではとても身近なものです。子どもたち自身もお茶会をしたり、どのお茶をいれるのかを子ども同士で決めたりしています。
大森:
いいですね、保育にお茶を自然に取り入れていらっしゃるのですね。先ほどは、広いランチルームも見せていただきました。
迫田:
お茶とともに食事もとても大切にしています。保育園では12時間近くお子さんをお預かりしていますので、食事が生きる源になってくるのではないでしょうか。そのため、与えられる食事だけではなく、子どもたち自らが食に関わることが大切だと考えて、子どもが自分の食べる量を選べるように、ビュッフェスタイルで提供しているのが特徴です。
大森:
自分で選べるのですね。何歳からビュッフェスタイルをやっているのですか?
迫田:
3歳からです。ビュッフェスタイルにしたのは30年ほど前ですが、茶々保育園が先駆けだったのではないかと思います。そのため当時は、スタッフからも「子どもたちが好きなものばかり食べて、食べ過ぎると偏りが出てしまう」と大反対されました。まずは3週間やってみてほしい、やってみて問題が起きるようだったらやめるから、とスタッフに伝えてスタートしました。
大森:
やってみていかがでしたか?
迫田:
実際にやってみると、1週間もしないうちに子どもたちは適量を取るようになったのです。確かに数日間は、食べ過ぎてお腹を突き出してフーフー言っているような子どももいました。でもだんだんと、おかわりすることができるし大丈夫だということがわかってくると、適量を取れるようになっていきました。また、野菜が嫌いだと言っていた子どもたちが、ドレッシングを2種類用意することで、きちんと食べるようになったりもしました。このような子どもたちの姿を見て、「自分で選ぶということは、こんなにも人を変える力があるのだ」ということがわかりました。
大森:
食事を中心として、人の成長や関わりを捉えるということが素晴らしいですね。私は子どもが好きで、子どもの発達も研究していますが、人間の人生にとって「食べる」ということはとても大きな意味をもつことだと感じています。赤ちゃんの頃は母乳やミルクを飲んで、お腹いっぱいになると寝ますね。食べては寝て、そのくり返しで大きくなっていきます。保育園を経て小学校・中学校・高等学校と学び、仕事や社会活動をしている間も、人は食べて成長していきます。そして晩年になると、最初にできなくなってくるのは食べることなのです。食べることができなくなって、やがて人生を全うします。人間にとって食べることは人生を通して行われるとても大切なことなのではないでしょうか。そのため、どこで、誰と、何をどのように食べるのかということは、健康や人生に大きく関わってくるのではないかと思います。そのように考えると、保育園の5歳児までの食事というのは、その人に大きな影響を与えるものだろうと考えていたので、今のお話の内容はとても感じ入りました。
迫田:
ランチルームは、子どもたちから調理の様子やスタッフの様子も見えるように設計しているため、自分たちの食べているものがどのように作られているのかを知ることができます。また、温かいものは温かいうちに、冷たい方が美味しいものは冷たいまま出せるところも、ビュッフェスタイルのよさだと感じています。このように食事のスタイルの変化によって子どもの姿が大きく変わったことで、スタッフにも気づきがあったようです。「食事でこれだけ子どもたちが変わるのなら、きっと保育室などもよりよい環境に変えられるはずだ」と思うようになったようなのです。食事での試みを経験して、園の環境も見直すきっかけとなりました。
大森:
テーブルごとに集まってみんなで食べるというのは「同席同食(どうせきどうしょく)」ということですね。同じ席で同じものを食べるということは、生活様式が変わって難しくなってきています。どうしても孤食・個食になりますから。これは社会の変化でやむをえない状況ということもありますが、意識的に同席同食という環境をつくることは人間関係を築く上でもとても大切だと思います。
日本の伝統的な味を楽しむ
大森:
茶々保育園さんの園名は、お茶にちなんでいるのですか?
迫田:
はい。茶々保育園は昭和54年に入間市で創立しましたが、お茶はこの入間という地域にとっての誇りであり、保育園としても地域の方々からかわいがってもらい愛される保育園になりたいと思いましたので、「茶々保育園」という名前にしました。
大森:
とてもあたたかい響きですね。子どもたちも言いやすいのではないでしょうか。実は余談ですが、私の飼っている犬も「チャチャ」という名前なのです。とても近しいものを感じます。今年で15歳になるのですが、食事には体にもよいだろうとお茶を取り入れていて、二番煎じのお茶を飲ませたり、煮干しと鰹節と茶殻を混ぜた食事をとらせています。
迫田:
あら、チャチャさんも頑張っていらっしゃるのですね。煮干しや鰹節と言いますと、茶々保育園グループではお茶も大事にしているのですが、お出汁を取ることも大切にしています。かつお出汁や煮干し出汁、昆布出汁など、料理に合わせて変えています。また入園式の時には、入園児の保護者をお迎えする際に、調理の担当者が「おもてなし出汁」を用意して、「茶々保育園なのでお茶を出すことは大切なのですが、私たちがお料理の基本にしている味なので味わってみてください」と保護者の方にお出ししています。やはり日本の食の基本は出汁だと考えていますので、科学調味料を使わないようにしています。
大森:
日本の伝統的な味ですから、大事なことですね。出汁についても、子どもたちは楽しんでいるのですか?
迫田:
はい。子どもたちは「今日は何の出汁だ」などと、利き酒ならぬ「利き出汁」をしていますよ。
大森:
昆布、かつお、いりこ、など素材で全く違う味ですからね。混ぜるとすごく美味しくなりますしね。
迫田:
最近では、認定こども園という形態で、幼稚園児と保育園児が一緒に過ごすような施設があります。早く帰っていくお子さんと夕方まで過ごしているお子さんがいるのです。また入園時期も異なるため、0歳からのお子さんもいれば、3歳から入園してくるお子さんもいます。そのような環境ですので、保育園で0歳から過ごしてきたお子さんたちと、3歳まで家庭で過ごしたお子さんでは食生活が違うのです。そのことに3歳から入園するお子さんの保護者たちも戸惑われて、「うちの子は煮物を食べません」「デザートがないと食べません」ということを、よくおっしゃいます。そのような言葉を聞くたびに、お出汁の美味しさや食事の美味しさを、子どもたちには感じてほしいものだと思います。入園してすぐの頃は「食べられるだけでいいよ」と伝えながら様子を見守っていますが、すぐに子どもたちは煮物などもたくさん食べるようになり、その姿に保護者の方が驚かれるということもよくあります。
大森:
日本料理と西欧料理との一番大きな違いは、水を使うか使わないかのようですね。煮るという調理法は西欧には少なくて、日本料理のように煮て美味しくするということはとても難しいようです。煮物や出汁という、ひと手間をかける料理は文化的にもとても大事ですね。
迫田:
子どもにとっての食は、大人の考え方ひとつで豊かになり、食事の楽しさなども伝えることができますから、本当に大切なことだと感じます。
大森:
栄養面から見ても、ファーストフードなどは脂質過多になり偏ってしまいますから、バランスよく考えられた園の食事はとても大切なのでしょう。歯ごたえのあるものを食べたり、よく噛んで食べると美味しいという経験をすることもできます。盛り付けも丼に一つになっているものよりも、ご飯とおかずと汁物があるような一汁三菜のような盛り付けを経験することも、食を通した子どもの発達にはとても大切なことだと思いますね。
生活を伝える「しぐさ」と「レシピ」
大森:
茶々保育園さんでは、よくお茶会をするのですか?
迫田:
日ごろからお茶会をします。また毎年、園の隣の茶畑で茶葉を摘んで、蒸して、お茶を作った時のお茶パーティーを行うのですが、お団子を作って一緒に楽しんだりしています。
大森:
お茶摘みやお団子作りを、子どもたちが自分でするのですか?
迫田:
そうです。茶畑の茶葉を摘んで、乾燥させて、ホットプレートで焙煎します。お母さんたちが園にお帰りになると、子どもたちができたてのお茶をお出しするのです。
大森:
いいですね。
迫田:
また、小学校が近くにあるのですが、20年ほど前に生活科ができた時に「生活科でどのようなことをしたらよいのかわからない」という悩みをおもちでした。偶然に、小学校の先生が保育園の保護者の中にいらして、茶々保育園がお茶会や茶摘みしているということを小学校に伝えてくださいました。そのこともあり、小学校の低学年の子どもたちが郷土の大切な産業を日常生活に入れている様子を見学しにきてくださいました。お茶を通した小学校との交流は、その後も何年も続いています。
大森:
子どもたちが参加すると、どのように食ができるのかを知ることができますね。もちろん最初は簡単なものからなのだと思いますが、とても大切なことですね。
迫田:
保育は生活を基盤にしています。生活の中に全てを入れ込みながら、学びとっていけるように工夫していることを、小学校でも注目してくれました。家庭での生活時間が短くなっているからこそ、保育の中に生活が入り込んでいるということは大切なのだと思います。そのような姿勢を、いろいろな方が気づいてくださるのはありがたいことです。
迫田:
茶々保育園グループでは、食事をする時のテーブルに小さな花瓶にお花を挿して飾っています。そうすると子どもが家庭に帰って「うちにはどうしてお花がないの?」と家族に尋ねるのだそうです。子どもが自分の感性で気がついてくれることは嬉しいですね。その他にも、環境については子どもたちと一緒に考えるようにしていて、ゴミ問題などにも取り組んでいます。分別をどのようにするかを、これは土に戻るのか戻らないのかを確認するところから学んでいるのですが、最近では子どもたちがゴミを集めて重さを測って、事務所などはゴミがいっぱい出ると子どもたちに注意されたりします。いつの間にか、子どもたちが意識して率先して行うようになりました。
大森:
環境について考えることは大事ですね。徳島県上勝町という「阿波番茶」というお茶を作っている地域があり、よく訪問します。上勝町は環境問題にも積極的に取り組んでいて、割り箸1膳がA4の紙1枚に相当するなど、細かく徹底して取り組んでいます。もともと上勝町は過疎の村だったのですが、「葉っぱビジネス」という高齢者が地域の資源である葉っぱを首都圏の日本料理店などのために出荷するというシステムで成功して有名になった町です。この流れで環境問題にも町として積極的に取り組んでいます。つい使い捨てになりがちですが、資源のない日本ではこの姿勢に学ぶべきところは多いだろうと思います。
迫田:
私たちが日常やっている保育は地味なのですが、子どもたちが家庭で「今日みんなでこんなこと話したの」と話すことで、食卓の家族の団欒の中に保育園の話題を載せたいという思いがあります。連絡帳やおたよりなどいろいろなもので発信していますが、それだけではなく親子の会話の中で、「今日は何やっていたの?」と聞かれた時に「ブロック」「粘土」と答えるだけではなくて、「みんなでゴミのこと考えた」とか「今日は事務所のゴミが○gあって、園長先生にちょっと多いのではないですか?って言ったの」とか、生活している内容を家庭の中で伝えて、保護者の方が共感してくださる感性までつなげていきたいと思っています。
大森:
子どもたちが家に帰って話したくなる状況を提供しているということですね。親としても、園でどのようなことをしているのか知りたいですし、子どもが言うことに耳を傾けたくなります。
迫田:
子どもたちにとっては、保育所が故郷なのではないかと思っています。就労環境のためにやむをえないことですが、働くご両親が迎えに来るのは夕方も暗くなってからで、普段からご近所の子どもと過ごすこともできませんから。園が故郷にならないといけないのです。
大森:
そうなると、どのように何を伝えるかが大切になってきますね。
迫田:
茶々保育園グループでは、生活習慣を「しぐさ」として考えていまして。例えば「うがいをする」ということを分解して絵に示した「レシピ」と呼ばれるものがあります。うがいをして、タオルで拭いていい気持ちになる、という流れを絵にして示しています。その他にも「鼻をかむ」「歯磨きをする」「お茶をいれる」というレシピを作っています。子どもたちにぜひとも伝えたいことは、スタッフが一人ひとりが違う伝え方をするのではなくて、生活文化として伝えていこうとしています。
大森:
先ほどお茶を出してもらった時も、上手に出してくれました。「どうぞ召し上がれ」と言われると、こちらも「ありがとうございます」とお礼を申し上げたくなります。
迫田:
お茶を出すときにはお盆をテーブルにおいて、両手で相手の前にお茶を出して、「どうぞ召し上がってください」と伝える。その一連の流れをレシピでは示しています。これは、子どもたちの日常生活や生活習慣を、どのように伝えたらよいかを考えたことがきっかけでした。最初は「靴を脱ぐ」ということを伝えるために作ったのですが、大人は次に外に出るときのために後ろ向きに靴を脱ぎますが、子どもには難しいことです。
大森:
確かに、子どもにとっては複雑な動きですね。
迫田:
子どもが靴を脱ぐためには、玄関に入ってきてそのまま脱いで、しゃがんでくるりと靴の向きを変えて、靴の泥を落とすために靴のかかとで床をつつきます。子どもたちに伝えるためには、お茶のお手前と同じように伝えるとよいのではないかと考えて、一つひとつの動作を分解して作りました。そうすると、子どもたちもとても嬉しそうに靴を脱ぐことをくり返してやってくれました。子どもたちにとって無理や無駄がなく、スタッフが生活文化として伝えられるようにしています。
大森:
共有するためには、レシピが必要なのですね。年齢ごとにいろいろあるのですか?
迫田:
レシピは一通り子どもたちにゆっくりと保育者がやって見せています。子どもたちの「できる」という自信につなげるためにも、自分でやってみようという気になるような環境を整えるようにしています。自立に向けた環境を整えることは、保育園ではごく当然のように行われていますが、保育士の養成校ではなかなか教えてもらえないことかもしれません。「生活」を全ての根底に流れていることを意識しています。
大森:
伝え方が大切なのですね。お茶をはじめとする「しぐさ」の教育が子どもたちの生活に密着していて、人間形成にとってとても大切だなと感じます。
お茶によるコミュニケーション
迫田:
保育園は子どもの安全を担保しなくてはいけないので、何よりもまず安全を配慮して、門には鍵をかけているのですが。そうすると、社会や地域から閉ざされてしまうという現実があります。そこで、保育所をもっと開かれた場所にしていこうと始めたのが「ちゃちゃカフェ」です。私たちの財産であるお茶を通して、地域と繋がれる場所があるとよいのではないかと考えました。
大森:
ぜひ、カフェでも味わわせていただきたいものです。
迫田:
今は、送り迎えの保護者の方が利用してくださったり、毎朝利用してくださる近所のおばあちゃんがいたり、小学生が宿題をしていたりします。いろいろな人が行き来することは想定していたのですが、想定以上に地域とのつながりが生まれていて、だんだんとご理解いただいてきました。お茶は無料で提供していますので「いただいてばかりではいけないから、何かお手伝いしたいわ」と言ってくださる方もいらっしゃいまして、お茶は人と人を繋げてくれるということを改めて感じています。
大森:
茶飲み話やお茶談義などという言葉もあるように、昔からお茶を楽しみながらいろいろな話をしてきました。またその時の話は、愚痴などにはなりにくく、発展的な話になるようです。
迫田:
昔は縁側でお茶を飲んだりしていましたが、今は家庭の中に招き入れるということが少なくなってきました。時代に合わせた形があるのかもしれませんね。
大森:
全体的な変化の中で、お茶をどう使うかということですね。私も「大妻女子大学お茶大学」でお茶を使った教育「茶育(ちゃいく)」をしていまして、お茶の品種やお茶料理の普及をしています。ここでも時代に合わせた楽しみ方があると思っています。専門的にはなりますが、お茶は淹れる温度で全く味が変わります。水と茶葉を一緒に入れて冷蔵庫に置いて水出しのお茶にすると甘くなり、40〜50度くらいのお湯で淹れたお茶には爽やかな渋みがあり、熱湯で淹れたお茶は苦味が増します。アミノ酸、カテキン、カフェインという甘・渋・苦(かん・じゅう・く)という味が出てくるのです。そのような体験をしてもらうようにしています。
迫田:
歴史や文化だけではなく、科学的にも伝えているのですね。
大森:
また、お茶を入れると茶葉の2割くらいの成分を飲んでいるのですが、残りの8割くらいの茶殻にも、食物繊維やタンニン、不溶性のたんぱく質やデンプンがたくさんあります。そこで、茶殻を美味しく食べる方法なども考案しました。豆乳200ml、りんごジュース200ml、茶殻をミキサーに入れて攪拌すると美味しい「茶殻スムージー」ができます。茶殻のままではどうすることもできなくても、少し手を加えると子どもから大人まで美味しく味わえるものになります。社会のあり方に合わせて、お茶も変わっていってよいのかもしれません。
子どもたちの未来を考える
大森:
お茶の研究をしていますと、海外にもよく行きます。世界的に見ると、お茶の生産国は発展途上国がほとんどです。ミャンマーやバングラデシュやラオスなどです。現地の小学校などにも行きますが、施設は恵まれているとは言えません。子どもたちはみんな明るくて元気なのですが、着るものもそんなによいわけではなく、いつも空腹だったりします。子どもたちも「もっと勉強をしたい」という意欲はあるものの、字や絵を描くときには地面に書いていたりします。そのような様子を見ていると、子どもに寄り添うことはどのようなことなのかと考えます。本日うかがってきた「自ら考える」「気づきを与える」ということは本当に大事なことだと感じています。
迫田:
私たちの法人では、職員研修の一環として海外研修をしています。ドイツや北欧を中心に保育現場を視察します。デンマークで視察した時に、デンマークの子どもたちは主体性が育っているのですが、おやつの時のやりとりがとても印象的でした。まず「あなたはどのくらいの量が必要?」と聞いておやつをよそっていきます。茶々保育園でもビュッフェスタイルを設けて同じようにしているなと思ったのですが、子どもの希望を聞いて量を決めて食べた後に、最後に「あの量はどうだった?」と聞いていたのです。このやりとりには保育者としてとても衝撃を受けました。
子どもが「足りなかった」と言えばもう少し食べられることを確認して、子どもが「多過ぎた」と判断すれば少なめにしておかわりすることを伝えたりしていたのです。自分の考えを行動に移したことを、自分でどのように判断するのかまで聞いていました。喜びの中に学びの観点を入れていて、欠かさず聞き取って次に活かしていたのです。
大森:
やりとりとして高度ですね。
迫田:
「食」というのは子ども自身が「こうありたい」ということがとてもよく現れます。思いを込める分だけ幸せにつながってきますので、ヨーロッパでは日頃からこのようにディスカッションすることで個が育っているのではないでしょうか。乳幼児期の体験がその人の根底をつくっていると思ってはいましたが、実際にこのような姿を見たり話を聞くと、とても励まされます。子どもたちが未来を作ってくれるのならば、故郷である園は環境をしっかり整えて、次の世代につなげていくことが大切だと改めて感じています。
大森:
子どもに「気づき」をどのように提供するのか、それが子どもにとって大きく影響してきますから、とても大事なことなのですね。
- 大森正司
- 大妻女子大学 名誉教授/「お茶大学」校長/農学博士。
1942年生まれ。専門は食品科学。東京農業大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程修了。
長年にわたり、お茶の科学的分析、薬効などについて研究調査を行っている日本茶研究の第一人者で、お茶博士として日本茶の普及に努める。現在は「大妻女子大学お茶大学」で食育・茶育の指導者育成をしている。『おいしい『お茶』の教科書―日本茶・中国茶・紅茶・健康茶・ハーブティー』(PHP研究所)『新・緑茶の驚くべき効用』(チクマ秀版社)など、著書多数。